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研究内容紹介

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社会的要因・環境要因が人の健康を決定する

氏名
津野 香奈美
所属
ヘルスイノベーション研究科
研究分野
社会医学,行動科学,精神保健学,産業保健学

取り組み内容

人の健康を決定するのは、遺伝や生活習慣等の個人要因だけでなく、その人の周りを取り巻く社会的要因が大きいことがわかっています。健康の社会的決定要因を研究するのが社会疫学という学問ですが、私はその中でも、多くの成人が影響を受ける環境要因としての職場環境に関心を持っています。例えばこれまで、上司のリーダーシップ形態が従業員の健康に及ぼす影響、職場におけるいじめやハラスメントの健康影響及び発生要因、礼節ある職場の健康被害予防効果等に着目してきました。

 

最近では、いじめやハラスメント等のネガティブな人間関係が周囲にも健康被害をもたらすことを明らかにし、ハラスメントのスピルオーバー(波及)効果と名付けました。いじめやハラスメントは個人間の問題とされがちですが、職場にハラスメントが存在すると、自分自身が直接被害をうけていなくとも、将来的にメンタルヘルス不調になったり離職意思が高まったりすることを明らかにしたものです(詳細はTsuno et al., J Occup Environ Med, 2018)。

 

2018年度からは、これらの研究結果を基に、(株)クオレ・シー・キューブ、SBアットワーク(株)、東京大学との産学共同研究を実施しており、パワーハラスメントの将来発生リスクを予測するサービスを共同開発し、現在実証実験中です。

 

さらに、米国ハーバード公衆衛生大学院や、米国VHA National Center for Organization Development、WHO/ILO/海外大学院研究者との共同研究グループ等、複数の国際共同研究に参画することで、国際比較可能なデータの収集や研究結果を国際的に検討・発信することに取り組んでいます(国際共同研究例:Kim et al., J Occup Environ Med, 2019; Rugulies et al., Environ Int, 2019)。

メッセージ

人の健康に影響を及ぼす要因がわかれば、次に行うべきことは「改善」です。ただ、職場環境を改善することは決して容易なことではありません。また、正しく効果を測定するためには、介入を行う職場と行わない職場を分けて結果を比較する等のデザインが重要になります。これは、地域環境を対象にしても同じことです。一方で、個人を対象にするよりも大きな効果をもたらすことができる可能性があります。環境要因にアプローチすることで人々の健康がどう変化するかに関心があれば、ぜひ一緒に共同研究ができればと思っています。お気軽にお問合せ下さい。

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