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研究内容紹介

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甘え、性嗜好障害

氏名
細谷 陽
所属
看護学科
研究分野
精神保健看護学
キーワード

患者-看護師関係、葛藤、アディクション

取り組み内容

細谷陽 (2016). 「甘えの観点から見た精神科男女混合慢性期閉鎖病棟における患者との関わりの特徴」 日本精神保健看護学会学術集会・総会プログラム・抄録集 26, 108.

細谷陽, 原田隆之, 大石雅之 (2012). 「精神科外来における性嗜好障害治療プログラムの開発と評価(第2報)」 犯罪心理学研究 49, 6-7. など

 

私は修士課程において精神科慢性期閉鎖病棟で1年間フィールドワークを行い、じっくりと患者と関わる中で様々な感情体験をしました。中でも、患者が私の側に何度もやってきて何かを伝えようとするものの、なかなか本音が見えてこないことにヤキモキし、関わりにくさを感じることさえありました。また、はっきりと自分の思いを伝えることができないのは私も同様であり、患者と一緒になってコミュニケーションの難しさを作り出していました。しかし、フィールドワークを重ねるごとに患者たちと私の関係は変化し、お互いに少しずつ自分の気持ちを語ることが増え、それとともに関わりにくさを感じることは少なくなりました。そして、最終的に患者との関係を振り返ってみると、関わりにくさの根幹に「甘え」にまつわる葛藤(甘えたいが、甘えたら見捨てられてしまうのではないか)が存在していたのではないかと思うようになりました。私はこのフィールドワークでの体験をもとに修士論文を書き、それ以降「甘え」に興味関心を抱き研究を行っています。

 

また、臨床で看護師として働いていた時に、私は性に関する問題行動(風俗などによる借金や性犯罪など)を繰り返してしまう人を対象とした集団精神療法を担当していました。彼らの行動は決して性欲だけによるものではなく、スリルや達成感、時には過去の恨みがましい思いも関係しており、いったんスイッチが入ってしまえば止めることの難しい、自己嫌悪を伴うものでした。これはアディクションとして捉えることが必要な、意思の力だけではどうにもならない、治療的な関わりを要する行動だといえます。性犯罪が厳罰化だけでは対応が不十分なのも、この点にあります。これまで私は治療プログラムの実施と評価を量的な研究で示してきましたが、それに加え、アディクションと密接な関係をもつ「甘え」や「自己愛」という観点による研究も必要だと考えています。

 

そして現在、看護学科の教員として働く中で、私は臨地実習における患者-学生関係で何が起きているのかを、患者の成育歴と結びつけながら「甘え」の観点で捉え、学生にフィードバックすることがあります。こういった患者-学生関係の理解とその指導にも「甘え」の観点は有益であり、研究が可能ではないかと考えています。

 

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