News

戻る

人間総合科 成教授らの研究成果が「iScience」に掲載されました

戻る

人間総合科 成教授が、京都大学の上村教授らと共同研究した論文が、アメリカの出版社Cell Pressが発行する国際学術誌「iScience」のオンライン版に掲載されました。

 

【本研究の背景】

動物は、受精卵から発生・発育し、性成熟過程を経て、繁殖行動をとることができます。同時に、性成熟過程は、生殖に必要な生殖器官や性的行動を司る脳神経系の発達のみならず、内分泌系、筋骨格系や消化器官など、様々な組織・器官の生殖に向けた連携・統合過程でもあります。

しかしながら、多くの動物は、個体の性成熟過程がシームレスに連続的で、また、長い時間をかけて達成される場合が多く、性成熟過程における組織・器官の統合過程を時系列で捉えて、全体像を理解することは非常に困難でした。

 

【本研究の概要】

本研究では、キイロショウジョウバエの性成熟過程の理解にスポットを当てるため、独自に開発した個体別活動測定システムを用いて、キイロショウジョウバエの羽化から初交尾に至る過程に起こる行動スケジュールを、詳細かつ正確に多個体同時測定する手法を開発し、この間に起こる、翅の伸展、初排泄、初摂食、求愛行動、活動量変化など、一連の行動イベントの時間進行過程を明らかにしました。

その結果、初交尾までの時間は、サーカディアンリズム(いわゆる体内時計)や羽化後の栄養摂取といった環境要因に影響されない一方、系統間では異なることから、遺伝的要因に影響されることを示しました。また、羽化後の活動量上昇期に雌雄差があることや、オスの雌への求愛反応が急上昇する相変化(Drastic Male Courtship Arousal,DMCAと命名)の存在を明らかにしました。

これらの行動特性は、性成熟過程における行動の明確な指標となり、行動・生理的性成熟の統合メカニズムの更なる探求につながることが期待されます。

 

<補足:キイロショウジョウバエ>

完全変態昆虫であるキイロショウジョウバエは、羽化してから短い性成熟期間を経て、初めて交尾することができるようになります。また、キイロショウジョウバエは、モデル生物として、これまで性行動のほか、様々な組織・器官の発生メカニズムを理解する上で、多くの先駆的な研究がなされてきました。

 

【論文タイトル】

Road to sexual maturity: Behavioral event schedule from eclosion to first mating in each sex of Drosophila melanogaster

<和訳>性成熟過程:キイロショウジョウバエの雌雄における羽化から最初の交尾までの行動イベントスケジュール

 

【著者】

成 耆鉉 神奈川県立保健福祉大学人間総合科教授

上村 匡 京都大学大学院生命科学研究科教授

姜 時友 山形大学大学院理工学研究科助教

 

【掲載誌】

iScience(Road to sexual maturity: Behavioral event schedule from eclosion to first mating in each sex of Drosophila melanogaster: iScience (cell.com)

前のページに戻る