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戻るゲーミフィケーションアプリにおけるインセンティブ機能は1日1万歩達成割合の増加と長期的に関連する(研究報告)
戻る本学ヘルスイノベーション研究科では、未病コンセプトに基づく社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践しています。
その一環として、このたび本学博士課程の柄澤紀花(指導教員:根本裕太講師)らが東京大学、京都大学、ハーバード大学との多機関共同研究として実施した研究成果が、疫学分野の国際誌Journal of Epidemiology に掲載されましたので、お知らせします。
1 研究の背景・目的
身体活動不足は、心身の健康や生活機能の維持に関わる公衆衛生上の重要な課題です。近年では、スマートフォンアプリやウェアラブル端末を活用した身体活動促進の取り組みが広がっています。特に、目標達成時の特典や利用者同士の競争、アイテム収集の楽しさといったゲーム要素を取り入れた「ゲーミフィケーション」は、行動変容を促す方法として注目されています。
本研究で用いた「パ・リーグウォーク」は、プロ野球パシフィック・リーグ6球団の公式歩数アプリです。本アプリは健康づくりだけを前面に出すのではなく、日々の歩数で好きなチームを応援したり、他球団のファンと歩数で競い合ったりする機能を備え、ファン同士のつながりやチームの応援を楽しみながら、自然と身体を動かせるように設計されています。
本研究では、パシフィックリーグマーケティング株式会社より提供された同アプリの利用者49,008 人、2016 年3月から2022 年12 月までの約1,100 万件の歩数データを解析しました。具体的には、1 日1 万歩達成時に選手のデジタル画像が得られるインセンティブ機能「選手図鑑」が、日々の歩数分布およびその長期的な変化とどのように関連しているかを検討しました。なお、本アプリは現在サービスを終了しています。本研究は、実社会で運用されたアプリの匿名化データを用いて、身体活動促進に関わる知見を得ることを目的としたものです。
2 研究結果
・ インセンティブ導入前(2016 年3月~9月)には、1 日1 万歩を達成した日の割合は20.7%でしたが、導入直後(2016 年11 月~2017 年3月)には24.6%、その後の期間(2017 年4月〜9月)には25.2%に増加しました。
・ 実際に観測された歩数分布と、1万歩周囲への集中がない場合に想定される分布とを比較し、目標値である1 万歩の周辺にどの程度歩数が集まっているかを分析しました。その結果、インセンティブ導入前には1 万歩周辺の明確な集中は認められませんでしたが、導入後には1 万歩周辺の観測数が想定される数を明確に上回っていました(図1)。
・ インセンティブ導入後の歩数変化は、歩数分布全体で一様に増えた訳ではなく、1 万歩未満で目標値に近い歩数帯に集中していました。このことから、このインセンティブは「あと少しで1万歩に届く」状況にある利用者の行動を後押しした可能性があります。
・ アプリ利用期間別にみると、1万歩を達成した日の割合は長期利用者においても維持されており、利用開始から6年目以降のデータでも31.8%でした(図2)。また、1 万歩周辺に歩数が集中する傾向についても、利用開始から6年目以降の長期利用者においても同様に確認されました。

3 まとめ
本研究の結果から、1 日1 万歩を達成した際に得られるインセンティブは、1 万歩という明確な目標に向けた日々の行動変化を促す可能性が示されました。また、この歩数分布の特徴はアプリの長期利用者でも確認されました。このことから、楽しみや関心に基づくインセンティブは、長期的に身体活動を増やす行動につながる可能性があると考えられます。
身体活動を促進するためには、日常生活の中で楽しみながら健康行動を継続できる仕組みづくりが重要です。本研究は、ゲーミフィケーションや非金銭的なインセンティブを活用したデジタルヘルス施策の設計に示唆を与えるものと考えます。
(論文掲載)
Karasawa, S., Nemoto Y., Hayashi H., Kondo N., Kawachi I., Kamada M. (2026). Long-term changes in daily step count goals following the introduction of a gamified smartphone application in Japan. Journal of Epidemiology, 0(0). doi:10.2188/jea.JE20260126
https://doi.org/10.2188/jea.JE20260126
問合せ先
公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院
ヘルスイノベーション研究科
講師・根本裕太
ヘルスイノベーションスクール担当部長 和田
電話 044-589-3312 shi-press@kuhs.ac.jp
