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中年期の女性の身体活動量の低下が高齢期の健康リスクを増大~21年間の追跡パネルデータを用いた分析(研究報告)~

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 本学ヘルスイノベーション研究科では、未病コンセプトに基づく社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践しています。

 その一環として、このたび本学の根本裕太講師らが実施したオーストラリアのクイーンズランド大学との共同研究の成果がまとまり、論文としてAmerican Journal of Preventive Medicine に掲載されましたので、お知らせします。

 

1 研究の背景・目的

 余暇時間の運動や家事などを含めた身体活動は、生活習慣病や高齢期の身体機能低下の予防に有効であることが分かっています。しかし、生涯を通じて身体活動量は変化するにも関わらず、身体活動の経年的な変化が健康にどのような長期的影響を与えるかについては明らかにされていませんでした。

 そこで本研究では、1946年~1951年に生まれたオーストラリア人女性11,611 人を 1998年 から2019 年まで21年間追跡した調査データ(the Australian Longitudinal Study on Women’s Health)を用いて、9年間の身体活動量の経年変化パターンを特定し、その後12年間の高血圧、糖尿病、肥満、抑うつ、身体機能障害の発生との関連を検討しました。 

 

2 研究結果

  • 身体活動の経年変化は4つの異なるパターンに分類され、増加群と低下群では9年 間の身体活動量が同等でした。(図1参照)
  • 低群を基準とし、各健康アウトカムの発生リスクを検討した結果、高群では高血圧 を除く全ての発生リスクが低く、低下群では糖尿病、肥満、身体機能障害の発生リ スクが低いことが示されました。(図2参照)
  •  低下群では、低群と比較して肥満発生リスクが高いことが示唆されました。 

 

3 まとめ

 本研究では、中年期の女性における身体活動の軌跡が、高齢期における慢性疾患の発生にどのような影響を与えるかについて検討しました。本知見から、一貫して身体活動量が多い、もしくは身体活動量が増加する女性は慢性疾患や身体機能障害の発症リスクが低いことが示唆されました。一方、身体活動量が低下した者では、一貫して身体活動量が低い者よりも肥満リスクが高いことが示唆されました。したがって、中年期に身体活動量が大きく低下する女性に対して重点的な疾患予防介入を行うことで、効果的に高齢期の健康リスクを低減できると考えられます。日本人を対象とした追加検証は必要ですが、同様の結果が得られる可能性は高いと考えます。

 

(論文掲載)

Nemoto Y, Brown WJ, Ding D, Nguyen Bm, Mielke GI. Trajectories of physical activity and chronic conditions among mid-aged women. https://doi.org/10.1016/j.amepre.2024.05.013 

 

問合せ先

公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院

ヘルスイノベーション研究科

講師・根本裕太

 

ヘルスイノベーションスクール担当部長 沖田

電話 044-589-3312 shi-press@kuhs.ac.jp

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