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女性における中年期以降の身体活動量の経年変化パターンとその規定要因の解明

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女性における中年期以降の身体活動量の経年変化パターンとその規定要因の解明

~21年間の追跡パネルデータを用いた分析(研究報告)~

 

 本学ヘルスイノベーション研究科では、未病コンセプトに基づく社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践しています。

 その一環として、このたび本学の根本裕太講師らが実施したオーストラリアのクイーンズランド大学との共同研究の成果がまとまり、論文としてInternational Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activityに掲載されましたので、お知らせします。

 

1 研究の背景・目的

 余暇時間の運動などを含めた身体活動は、健康づくりや生活の質向上に有効であることが広く知られております。しかし、身体活動の不足は世界的に蔓延しており、特に女性に多いとされております。この課題解決に向けては、「女性の身体活動は長期的にどのように変化するのか」という実態把握と、「どのような因子が身体活動の変化を規定しているのか」という要因の特定が必要になります。

 そこで本研究では、1946年~1951年に生まれたオーストラリア人女性10,371人を1998年から2019年まで21年間追跡した調査データ(the Australian Longitudinal Study on Women’s Health)を用いて、身体活動量の経年変化パターンとその規定要因を検討いたしました。

 

2 研究結果

  • 身体活動量の経年変化が5つの異なるパターンに分類されました(図参照)。高群、中群、低群に分類される全体の約7割の女性では、中年期における身体活動量の変化はわずかである一方、増加群、減少群に分類される全体の約3割の女性では、身体活動量が大きく変化することが示唆されました。
  • 身体活動量の経年変化を規定する因子として、最も影響が大きかった要因は体重と身体的・精神的健康でした。すなわち、健康的な体重で身体的・精神的健康が良好である女性ほど、初期の身体活動量が多く、高齢期に至るまで維持・増加しやすいことが示唆されました。
  • また、家庭内での役割(子供・孫の世話や親の介護など)を多く担う女性では、身体活動量の初期値が低いもしくは加齢に伴い減少しやすいことが示唆されました。
  • その他、先行研究において身体活動との関連が報告されている社会経済的要因(教育年数、経済的状況、婚姻状況、居住地)も身体活動変化パターンに関連することが示唆されました。

 

3 まとめ

 本研究はオーストラリア人女性を対象とした研究結果であるため、今後日本人女性を対象とした検証が必要ですが、同様の結果がみられる可能性があります。

 本知見に基づき、将来的に身体活動量が低下するリスクが高い中年期の女性に対し、運動実施を阻害する要因を除去し、身体活動を促進するための環境整備を進めることが必要です。これらの政策的な働きかけにより、高齢期の健康リスク(生活習慣病、認知症、フレイル)の低減につながると考えます。

 

(論文掲載)

Nemoto, Y., Brown, W.J. & Mielke, G.I. Trajectories of physical activity from mid to older age in women: 21 years of data from the Australian Longitudinal Study on Women’s Health. Int J Behav Nutr Phys Act 21, 4 (2024). https://doi.org/10.1186/s12966-023-01540-z

 

問合せ先

公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院

ヘルスイノベーション研究科 

講師・根本裕太

ヘルスイノベーションスクール担当部長 沖田

電話 044-589-3312 shi-press@kuhs.ac.jp

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