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戻るパワハラを見聞きするだけで心身の不調やモチベーションが低下
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~ハラスメントが身体疾患や労働生産性に及ぼす影響について(研究報告)~
本学ヘルスイノベーション研究科では、未病コンセプトに基づく社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践しています。
その一環として、このたび本学の津野香奈美准教授をはじめとする研究者が実施した標記の研究成果がまとまり、論文としてPLOS ONEに掲載されましたので、お知らせします。
1 研究の背景・目的
職場におけるいじめ・ハラスメントが、労働者の深刻なストレス要因となっていることは知られているものの、被害者の身体へのダメージや労働生産性に関する具体的な影響度、さらに、見聞きした同僚への影響についての研究は少なく、関連性の解明が待たれている。
そこで本研究では、職場におけるいじめ・ハラスメントの被害と見聞きしたことの両方と、精神疾患、慢性身体疾患などの様々な健康アウトカムや、疾病休暇、仕事の生産性、職務満足度などの組織アウトカムとの関連を明らかにすることを目的として、全国の20~60歳1,496名のデータをもとに分析を行った。
2 研究結果
職場においていじめ・ハラスメントの被害を受けるだけでなく、被害を見聞きすることも、心理的ストレス反応、精神疾患、仕事満足度の低さと有意に関連していた。また、職場でいじめ・ハラスメントを受けたことは、呼吸器疾患、7日以上の病気欠勤及び労働生産性の低さと関連していた。さらに、職場におけるいじめ・ハラスメント被害者は、被害も見聞きすることも経験していない者に比べ、病気欠勤日数が4.5日多く、労働生産性が11.2%低いという結果が得られた。
(評価方法)
職場のいじめ・ハラスメント、心理的ストレス反応、仕事満足度は新職業性ストレス簡易調査票(Inoue et al., 2014)で、労働生産性はWHO健康と仕事の成果に関する質問票(Kawakami et al., 2020; Kessler et al., 2003)で評価した。さらに、主観的健康状態、治療中の精神または身体疾患、病気欠勤は1項目で回答を得た。解析は階層的重回帰分析またはポアソン回帰分析を行い、いじめ・ハラスメントの被害・見聞きすることと健康および組織的アウトカムとの関連を評価した。
3 まとめ
本研究結果から、ハラスメントを受けていなくても見聞きするだけで、心身の不調やモチベーションの低下をもたらす可能性が示唆された。さらに、ハラスメントを受けることが呼吸器疾患と関連していたことは、ストレスが気管支収縮や喘息のさらなる悪化を引き起こす可能性を示している。
職場のいじめ・ハラスメントの被害者や見聞きした者への具体的な影響が明らかになったことから、個人や組織の損失を防ぎ、誰もが健康に働くことができる職場づくりに向け、社会全体で一層のハラスメント防止対策に取り組む必要がある。
(論文掲載)
Tsuno K, Kawakami N, Tsutsumi A, Shimazu A, Inoue A, Odagiri Y, Shimomitsu T. Victimization and witnessing of workplace bullying and physician-diagnosed physical and mental health and organizational outcomes: A cross-sectional study. PLoS One. 2022;17(10):e0265863.
doi: 10.1371/journal.pone.0265863.
https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0265863
問合せ先
公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院
ヘルスイノベーション研究科
准教授・津野香奈美
ヘルスイノベーションスクール担当部長 沖田
電話 044-589-3312 shi-press@kuhs.ac.jp