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コロナ禍で出産・育児を経験した女性の「産後うつ」の割合が倍増|Drastically increased postpartum depression during the COVID-19 pandemic and its association with social restrictions.

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~コロナ禍における社会制限及びサポート喪失と産後うつとの関連(研究報告)~

 本学ヘルスイノベーション研究科では、未病コンセプトに基づく社会システムや技術の革新を起こすことができる人材の育成とともに、健康長寿社会を実現する研究活動を実践しています。

 その一環として、このたび本学の津野香奈美准教授をはじめとする研究者が実施した標記の研究成果がまとまり、論文としてJournal of Affective Disordersに掲載されましたので、お知らせします。

 

1 研究の背景・目的

 コロナ禍において、妊産婦を取り巻く環境は大きく変化し、様々な制限を余儀なくされている。そこで本研究では、コロナ禍前後で出産を経験した産婦を対象に、これらの社会制限やサポート資源の喪失の経験と産後うつとの関連を明らかにすることを目的として、令和3年10月に、全国の産後1年以内の産婦600名を対象にインターネット調査を実施した。

 

2 研究結果

 コロナ禍で出産・育児を経験した産婦の約30%(28.7%)が産後うつ状態にあり、コロナ禍以前の割合(14.4%)に比べても、非常に高い割合であった。令和2年4月以降に出産した産婦の9割以上が、産後入院中の面会制限等の社会制限を経験していた。

 分析の結果、妊娠期間中及び産後に出産や育児について友人に相談できなかったこと、里帰り出産を諦めたこと、分娩施設の方針で出産や母乳育児が自分の希望通りにできなかったこと、離れて暮らす家族から産後のサポートが受けられなかったこと、産後入院中に医療従事者に産後の体調や育児について相談できなかったこと、新生児訪問・乳児検診・ワクチン接種が中止になったことが、産後うつと有意に関連していた。

 

(産後うつの測定)

 エジンバラ産後うつ病自己評価票(Edinburgh Postpartum Depression Scale: EPDS)を用い、先行研究の報告に倣い、一定点数以上のカットオフ値を用い産後うつの割合を算出。社会制限・サポート資源の喪失と産後うつとの関連については、ログバイノミアル回帰分析を用い、年齢、教育歴、世帯収入、居住地、初産・経産、出産時期、うつの既往を調整変数としてPrevalence ratioを算出した。

 

3 まとめ

 本研究結果から、感染拡大防止策としての社会制限・サポート資源の喪失と産後うつとの関連が示された。産後うつを予防するにあたっては、非常時にあっても適切な公的・私的サポートが行われるよう取り組みを考える必要がある。

 

(論文掲載)

Tsuno K, Okawa S, Matsushima M, Nishi D, Arakawa Y, Tabuchi T. The effect of social restrictions, loss of social support, and loss of maternal autonomy on postpartum depression in 1 to 12-months postpartum women during the COVID-19 pandemic. J Affect Disord. 2022;307:206-214. doi: 10.1016/j.jad.2022.03.056.

https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0165032722003032?via%3Dihub

English version

Abstract

The prevalence of postpartum depression during the pandemic (28.7%) was much higher than before (14.4%). In addition, COVID-19-related social restrictions and loss of social support from healthcare professionals, families, and friends were significantly associated with postpartum depression.

問合せ先

公立大学法人神奈川県立保健福祉大学大学院

ヘルスイノベーション研究科

准教授・津野香奈美

ヘルスイノベーションスクール担当部長 沖田
電話 044-589-3312 shi-press@kuhs.ac.jp

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