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徳野 研究室

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徳野 研究室

徳野研究室のご紹介

徳野研究室では「音声バイオマーカーに関する研究(音声病態分析学)」、「高濃度水素ゼリーに関する研究」などを行っています。いずれも一部商品化にまで至っています。

 

 

お知らせ

クラウドファンディング始めました

赤ちゃんの泣き声の特徴と睡眠パターンを組み合わせた解析で、自閉症の可能性を発見し、より早期に支援するための技術開発を目指します。

「自閉症スペクトラムの赤ちゃんの泣き声(泣き方)が、自閉症ではない赤ちゃんの泣き声(泣き方)と比較して、音声学的にも異なる」という仮説を実証するため、育児支援デバイスにより、1歳6か月までの泣き声と睡眠データを収集するとともいに、保護者に発育状況に関するアンケートを実施し、それらを解析することで自閉症患児と健常児の差異を見出します。

今回のクラウドファンディングを通じ、赤ちゃんの声を解析できる人材を雇用するための研究資金を確保するとともに、多くの皆様にプロジェクトを知っていただき、自閉症スペクトラムに対する理解を広めていきたいと考えております。

今回の研究は、「音声データ×医療」の視点を「乳幼児の小児医療」へと応用させていく大きな一歩となると考えています。ぜひ、皆様からのあたたかいご寄付と応援をお願いいたします。

プレスリリース:https://www.shi.kuhs.ac.jp/news/details_01777.html

クラウドファンディングサイト:https://readyfor.jp/projects/SHI

研究テーマ

音声バイオマーカー

友人や家族の声を聴いて「あれ?今日は調子悪いのかな?」と感じたことはありませんか?

音声病態分析とは心や躰の変化に伴う声の変化をとらえようとする医工学技術です。右の図のように、疾患ごとの声はなんとなく異なって見えます。この、「なんとなく異なる」を数値化して客観的な指標としてあらわしたものが音声バイオマーカーです。

バイオマーカーとは、ある疾患の有無や、進行状態を示す目安となる生理学的指標のことをいいます。例えば、採血などで示される数値などがそれにあたります。

 

医学生が医学を学び始めるころ、診断学の冒頭で患者さんの仕草をよく観察し声に耳を傾けなさいと教えらます。しかし、どのように患者さんの声を聞き分けるかを詳しくは教えられません。実際、熟練した医師は患者さんの声を聞いてその体調を推し量り、時には診断すら可能にします。すなわち、音声には人の身体に関わる情報が含まれていると言え、人の耳はそのわずかな差異を聞き分けていると言えます。音声病態分析学とは、この音声といういままではあまり活用されてこなかったバイオマーカーを客観的に示すことで様々な疾患を可視化しようとする医工学分野です。

 

ウェアラブルデバイスやスマートフォンなどの発達および普及に伴い、それらの機器から得られる生体情報を用いて、疾病の有無や治療効果を客観的に判定するデジタルバイオマーカーに注目が集まっています。音声バイオマーカーもデジタルバイオマーカーの一種類ととらえることができます。デジタルバイオマーカーは非侵襲で情報を収取でき、遠隔からの介入が可能などの特徴がありますが、なかでも音声は特別なセンサーを必要としないため応用範囲は広いと考えられます。
我々は、様々な疾患やシチュエーションにおける音声バイオマーカーの研究・開発を行っています。

ストレス・うつ病

ストレスの蓄積やうつ病の罹患を判定しようとするときに、自記式のアンケートや専門家による問診によって判定がなされます。これらは、いずれも主観的な判定であり、あいまいさが残ります。そこで、こうした疾患に客観的な指標を提供すべく様々なバイオマーカーの研究が行われています。しかし、いずれもまだ研究段階であり、特殊な機械や試薬が必要でコストがかかります。前述のように、音声バイオマーカーは簡単、非侵襲、安価、遠隔での利用が可能などの特徴をもちます。

ストレスが蓄積したり、うつ病を患ったりすると声がなんとなく元気のない声になります。我々はこのなんとなくを数値化しようと研究を重ねてきました。

 

我々の研究成果は、スマートアプリケーションとなり既に製品化され様々なところで活用されています。

アプリケーションで簡単に自分のストレスの程度やうつの兆候をとらえることができれば、リラックスやリフレッシュなど行動をかえることで体調を元に戻すことができます。こうした使い方が神奈川県の提唱する未病というコンセプトとマッチして、神奈川県の提唱する未病指標のひとつとして取り入れられました。

こうした、神奈川県と我々の取り組みがWHO(世界保健機構)にも認められ、報告書に取り上げられました。

認知症

 

 

認知症では通常の音声で認知症疑いの方と健常の方とを分けることができました。しかしながら、認知症に対する根本的な治療法がない現在、健常者のなかの軽度認知障害(MCI)いわゆる「ものわすれ」の段階で変化をとらえ、少しでも進行を抑えるべく生活様式を変えるなどの介入が必要です。しかしながら、図からもわかるように簡単な文章を読み上げるという通常の音声からでは物忘れの状態を判定できませんでした。

そこで、我々はデュアルタスクという手法を用いることにしました。デュアルタスクとは2つのことを同時に行うということで、ヒトは2つのことを同時にすると両方の動作が不正確あるいは遅くなります。認知機能が低下してくるとこのデュアルタスク時の動作の低下が顕著になることが知られています。ならば、デュアルタスク時の音声は通常の音声よりも変化しているだろうというのが我々の仮説です。予想通り、シングルタスク(計算のみを行う)のときの音声よりもデュアルタスク(歩きながら計算をする)の時の音声の辺の方が大きく、デュアルタスク時の音声を解析することで、MCIをとらえることができました。

その後、スマートフォンのアプリケーションを開発する段階で、歩きスマホは問題があるとの意見があり、現在はシングルタスク時の音声解析の精度を上げるべく研究を続けています。

COVID-19

現在、新型コロナウィルスに感染した場合(COVID-19に罹患した場合)、軽症の場合は自宅で療養することが一つの指針とされています。中等症以上になると入院等の処置が必要となりますが、厚生労働省が示す重症度分類においても重要な指標となる酸素飽和度(SpO2)を計測するパルスオキシメーターを全ての療養者の方々が持てるようにすることは非常に難しく、そのためそれを補う簡便かつ高精度な技術が必要です。

COVID-19のような呼吸器感染では気道や肺の炎症から音声が変化することが観察されます。そこで、我々はパルスオキシメーター変わる簡易的な方法として音声解析による中等症Ⅰの判定方法を開発しました。

中間の解析では13定型文の音声特徴量を用いた機械学習によって中等症1を90%の精度で判定できました。しかしながら、呼吸が苦しい患者さんに13フレーズもの文章を読んでいただくことは大変です。我々はさらに研究を重ね、新しい解析手法を加えるなどして、現在では「あ~」「え~」「う~」の3フレーズのみで90%以上の精度を出せるようになってきました。

プレスリリース:https://www.shi.kuhs.ac.jp/news/details_01374.html

自閉症

自閉症は小児期に早期に介入すればするほど将来の社会適応度が増すとされています。現在、本邦では言葉を話すようになる時期である2歳半から3歳で自閉症と診断されることが多いようです。一方、自閉症児を育てた経験のあるお母さんからは「自閉症の子が赤ちゃんの時にはなぜ泣いているかがわからなかった。」という声をよく耳にします。我々のグループは、これは自閉症の赤ちゃんの泣き方が自閉症ではない赤ちゃんの泣き方と少し異なるために、母子間の言語外コミュニケーションが上手くいっていないのではないかと考えました。

自閉症のお子さんの泣き声以外の特徴として、睡眠障害があげられます。

自閉症スペクトラムのお子さんは「なかなか眠れない(入眠困難)」、「途中で何度も目が覚める」、「睡眠時間が短い」、「日中に眠い」、「起きる時間がまちまち」などの睡眠障害を持つことが多いと知られています。

そこで、赤ちゃんの泣き声と睡眠パターンから自閉症の疑いを判定するシステムを開発すべくプロジェクトを立ち上げました。現在、この研究は準備段階であり、研究資金を得るべくクラウドファンディングを始めました。

クラウドファンディングサイト:https://readyfor.jp/projects/SHI

その他

音声バイオマーカーの研究は徐々に広がりをみせ様々な疾患やシチュエーションにおいて研究が進められています。

 

精神疾患(大うつ病・双極性障害・統合失調症・自閉症・自殺)
神経疾患(脳梗塞・パーキンソン病)
認知症(アルツハイマー型・レビー小体型・脳血管性・前頭側頭型)
循環器疾患(心不全)
呼吸器疾患(睡眠時無呼吸症候群・COPD・喘息・COVID-19・気管支軟化症)
耳鼻科疾患・歯科口腔外科疾患(舌癒着症・声帯ポリープ)
婦人科疾患(産後うつ・がん患者の抑うつ症状)
その他(高齢者の運転技術・アスリートのマインドケア・不登校/いじめ)

<関連企業や他大学での研究を含む>

高濃度水素ゼリー

音声で簡単にストレスやうつ病、そして認知症が検出できるようになっても、それに対する解決策がなくてはなりません。うつ病や認知症の患者さんの脳内では炎症性の反応が更新していることが知られています。我々は、水素が非常に強い酸化還元作用を持つことに着目し、水素がこれらの炎症反応を抑えるのではないかと考えました。しかしながら、水素を体に取り込むのは簡単ではありません。燃焼性の気体である水素は、ボンベに入れて持ち運ぶことは困難です。また、非常に水に溶けにくい気体でもあります。そこで、我々はゼリーの中に非常に細かい気泡として水素を閉じ込める技術に着目し、高濃度水素ゼリーを企業と共同で開発しました。

共同研究者との動物実験ではうつ病に効果があることが判っています。

現在、ヒト臨床試験として岡山大学と共同で歯周病・うつ症状・認知機能に関する調査をすべく準備中です。

詳細は下記をご参照ください。

スペシャル対談:エビデンスに基づく「水素」の新たな可能性

スペシャル対談:メンタル・ヘルス・ビューティ

業績

業績は下記ウェッブサイトをご参照ください。

 

https://researchmap.jp/s_tokuno/

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