大学紹介

平成30年度入学式での中村丁次学長式辞

2018年4月12日

入学式での学長式辞の様子 御入学おめでとうございます。

 皆さんが、この神奈川県立保健福祉大学を選んでいただいたことに、心から感謝申し上げます。また、本日は、黒岩神奈川県知事をはじめ、多くの人々にご臨席をいただき、このような入学式が挙行できたことを大変うれしく思っています。みなさんは、公立大学法人としての最初の入学生になります。

 大きな夢に向かって、今日から、横須賀のこのキャンパスで一緒に学ぶことになります。そこで、今日はその夢の話をします。
 最近、私は、夢は単に見ることでも、必ず実現できるものでもないと思っています。夢は、「語る」ものだと思っているのです。

 かつて先人は、貧しさの中で、社会の不安定と不条理の中で、多くの夢を見て、それを多くの人々に語りました。現実があまりにも厳しい時には夢の話として表現せざるをえなかったこともあります。しかし、近年、大人は夢をあまり語らなくなりました。

 その背景には、20世紀末から始まった「成果主義」があります。夢物語のような計画を立てるのではなく、最終的に成果を生み出すことが強調され、結果評価とも言われます。実現可能な数値目標を定め、それに向かって努力するという方法論です。この方法は、具体的な目標がわかり、評価が容易で、短期間で成果を上げることができるので、多くの領域で実施されてきました。しかし、この方法の問題点が出てきています。この方法だけでは、長期の成果が上がらないし、最終的にどのような世界があるのか、わからなくなってくるからです。現代社会が、不安定で、最終目標が定まらず、混沌とし始めているのはそのせいかもしれません。

 私は、最近、時代は変わりつつあり、もう一度、夢を「語る」時代が来ているのではと感じています。契機になったのは、2009年4月5日、当時のオバマアメリカ大統領が、プラハの大群衆の前で、世界の人々に語った「核なき世界」という夢の話を聞いた時でした。現代では実現性がなく、成果もなく、ただ夢を語っただけなのに、彼はノーベル平和賞を受賞します。ノーベル賞の歴史の中で初めての出来事です。

 実は、彼の演説の基本になったのが、その2年前に、アメリカを代表する4人の知識人が、ウォールストリートジャーナル紙に発表した「核兵器のない世界を目指すべきだ」という意見書でした。彼らは、長くアメリカの国防政策に従事していた専門家です。当初、このような非現実的な論文を発表することを、彼らは躊躇しました。

 しかし、背中を押したのが、1776年7月4日に公布されたアメリカ独立宣言であったと彼らは述べています。奴隷制が存在して人種差別が公然と行われていた社会の中で、「すべての人間は平等に造(つく)られている」と高らかに宣言したのです。現実とはあまりにも乖離した夢の話だったのですが、その思想は、多民族が共存するアメリカ社会の理想的な姿として継承されていきます。このことは、今だ、夢の途中ですが、人としてのあるべき姿として、不変の方向性を示しているのです。

 どのような病人や障害者であっても、手足が動かなくなり、記憶がとだえる高齢者であっても、生きる意志と残された機能さえあれば、差別されることなく、イキイキと幸せに生きていける。このような社会を作ることは夢なのかもしれません。しかし、その夢を、みんなで語り合い、絶え間なく努力していけば、いつかは実現すると信じています。たとえ、かなわなくても、理想とする夢の話を公言すれば、人々はそのことに共感し、同じ方向を向くことができ、理想に向かって動く、社会の原動力になるのではないでしょうか。

 皆さんは、今、子供の夢から、大人の夢への移行期にあります。これから、大学生活が始まり、時間は十分あります。家族はもちろんのこと、大学には、皆さんの夢を聞いてくれる教員、同級生、先輩や後輩、さらに地域の人々など、多くの人々が存在します。夢は、語れば、その実現に向けて、自分に宿題を課すことになり、真剣に取り組むことができます。さらに、たとえ小さな夢でも、夢は語れば、語るほど、実現したときには共に喜んでくれ、夢破れれば共に悲しんでくれる人が多くなり、同じ夢を見てくれる真の友が生まれてきます。

 これからの皆さんの努力に大いに期待しています。

 本日は、本当におめでとう。

 

保健福祉大学長
中村 丁次

 

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