大学紹介

平成29年度入学式での中村学長式辞

2017年4月12日

入学式での学長式辞の様子

 御入学おめでとうございます。

 皆さんが、この神奈川県立保健福祉大学を選んでいただいたことに、心から感謝申し上げます。本日から、同じ志を持った者が、横須賀のこのキャンパスに集合し、一緒に学ぶことになります。
 さて、今日、この時代に、皆さんが最高学府である大学、大学院に入学されたことの意味を、一緒に考えてみたいと思います。それは、現代社会は、人類がかつて経験したことがないほどの激動の時代であり、皆さんが、これから多くの難解な問題に直面していくからです。

 保健・医療・福祉の専門職を目指す皆さんにとっては、少子高齢社会はもっとも身近な課題です。しかし、それだけではありません。地球温暖化、エネルギーや食糧の問題、経済や教育の格差、国際的緊張等があり、これらは、皆さんが目指す専門領域と複雑に関係しているのです。皆さんは、これから、答えを出すのが困難な問題に取り組むことになります。

 多くの専門家が、これらの問題に取り組んでいます。例えば、バイオやロボットの最先端技術を用いて再生医療により障害を受けた部分を修理し、補強する研究も進んでいます。ビッグデータの解析により、答えを探そうとする試みもあります。また、人工知能を生活のあらゆるところに活用して、より合理的な生活を探求する試みもあります。

 ブラジルに住む有名なバイオアーティストにエドゥアルド・カッツ氏がいます。
 2000年、彼は、蛍光発色するウサギを芸術品として創作することを考え、フランスの有能な遺伝子工学者にその作業を依頼しました。科学者たちは、ごく普通のウサギの胚を取り出し、そのDNAに緑色の蛍光性を発するくらげの遺伝子を移植したのです。見事に緑の蛍光色を発する「きらきら光るウサギ」を完成させました。このような技術は、病気の予防や治療に活用され、治らなかった病気が治るようになるかもしれません。しかし、皆さんは、このウサギを美しいと感じ、明るい未来を手放しで感じるでしょうか。
 私は、あまり感じません。それは、人間が、自分の都合の良い人間を作ることの危険性もはらんでいるからです。つまり、科学技術により手に入れた知識や技術には、問題を解決してくれる計り知れない可能性がありますが、一方で危険性もはらんでいます。現代とは、このような時代なのです。

 では、これから私達は、どのような方向を目指して、この大学で学んでいけばいいのでしょうか。

 私は、その方向性は、物知り博士に必要な「知能」ではなく、「知性」を高めることだと思っています。「知能」とは、答えのある問いに対して、速く、正しく答える能力を言います。実は、皆さん方が、高校までで学んできたことは、この知能を高めることだったのです。残念ながら、知能だけならコンピューターで検索すればすぐに答えを得ることができ、いずれは人工知能が全てを代行することになります。

 一方「知性」とは、答えのない問いに対して、問い続ける能力を言います。答えのない時代に必要とされているのは、知能ではなく、この知性なのではないでしょうか。最近、私は、田坂広志氏が書かれた「知性を磨く」という本を読みました。彼は、知性を磨く条件として、七つ挙げています。それは、思想、ビジョン、志、戦略、戦術、技術、そして最後に「人間性」です。

 知性は、知能と違って、自分の努力により学び、多くの人々と接し、成功と失敗を何度も繰り返さないと手に入りません。まさに、近代科学の知識や技術を総動員させ、人々のイノベーションを高め、難解な課題に積極的に取り組む人材に必要なのは、「知性」だと思います。

 そういえば、古くから、尊敬を持って人を高く評価する言葉に、「あの人は、知性がある人だ」とは言いますが、「知能がある人」とは言いません。
 この大学で大いに学び、「知性」溢れる人間になってください。
 以上で、入学をお祝いして学長の挨拶とします。

 本日は、本当におめでとう。

 

保健福祉大学長
中村 丁次

 

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