学長式辞(平成28年度卒業式・修了式)

2017年3月28日

中村学長式辞

 本日は、多くの皆様方にご出席いただいき、このような卒業式及び修了式が挙行できたことに、心から感謝申し上げます。また、皆さんが、今日、この日を向かえるまでに、必死の思いで学業に励み、見事に卒業及び修了できることを大変うれしく思っています。

 さて、皆さんは、この大学に入学された際、何を考えて入学されましたか?恐らく、多くの知識や技術を学び、専門職となり、社会に貢献し、よりよい人生を送りたいと考えたと思います。本日は、その思いがかなえられ、未知なる世界に船出することになります。そこで、今日の新たな船出をお祝いして、これからの心構えについてお話しします。
 実は、人間が、自分の夢を実現させるために、まず、「学ぶ」ことを考え始めた歴史は、それほど古くはありません。以前、多くの人々は、「学ぶ」ことより、むしろ「信じること」を重要な事と考えました。人々は、朝な夕なに、神や仏、さらに賢人や統治者の教えを信じ、祈ったのです。約500年前、知的革命と言われるものがヨーロッパで誕生しました。世の中の現象を観察し、その原因を探り、法則を見出し、自分たちの生活を進歩させる科学的方法を創造したのです。このことにより、人間は、学ぶことの意義や価値を知ります。学ぶことで科学を発展させ、ヨーロッパで産業革命を起こし、文明を発展させ、合理的で豊かな生活が送れるようになります。

 このような知的革命がヨーロッパで起こった理由は、その前の大航海時代にあります。当時、ヨーロッパの征服者は、航海に出かける際、船員と同じように、天文学、地理学、気象学、植物学、人類学の学者を同船させたのです。未知なる世界を征服して金銀財宝を手に入れようとしただけでなく、その地から「学ぼう」としたからです。
 効果は、まず、船員自身に表れました。かつて、船員の半数は、航海中に体の軟らかい組織から出血が始まり、歯が抜け、傷口が開き、黄疸がおき、手足が効かなくなる難病で亡くなっていました。16世紀から18世紀の間に約200万人の水夫がこの病気で死んだのです。しかし、イギリスのクック船長は、ジェーム・リンダ医師の助言に従い、当時地方の民間療法として使われていた柑橘類を水夫に与えます。病気は、完全に予防、完治できました。今、考えれば、航海中、新鮮な野菜や果物が不足することで起こる、ビタミンC欠乏による壊血病だったのです。この壊血病の予防により、イギリスは、世界で最も遠くに航海できるようになり、世界中から膨大なデーターを獲得し、近代学問のリーダーになって行きます。物理学では、ニュートンがエネルギー不滅法則を見出し、生物学ではダーウィンが多くの航海記録を参考に進化論をまとめます。進化論により、人間は環境適応したサルが進化したことが明らかになり、生命科学が誕生し、現在の保健・医療・福祉を発展させる原点になりました。
 皆さんは、明日から未知なる世界へ、船出することになります。学んだことを社会で実践することは大切ですが、その新世界から新たに学び、これからも「学び続けること」は、もっと大切です。この精神は忘れないで船出して下さい。4月から当大学に博士課程が開設されます。再び、キャンパスでお会いできることを楽しみにしています。

 最後になりますが、皆さんと過ごした日々は、私ども教職員にとっても貴重な経験であり、一緒に学べたことは、大いなる喜びでした。皆さんが、私どもの学生であったことを、すべての教職員は、誇りに思っています。

 本日は、本当におめでとう。

神奈川県立保健福祉大学長  中村 丁次

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