学長式辞(平成27年度卒業式)

2016年3月16日

中村学長式辞

 本日は、黒岩県知事をはじめ、多くの皆様方にご出席いただき、このような卒業式及び修了式が挙行できたことに、心から感謝申し上げます。

 皆さんが、入学され、今日、この日を迎えるまでに、必死の思いで学業に励み、見事に卒業及び修了できるようになったことを大変うれしく思っています。

 皆さんは、この大学で、それぞれの専門領域における知識と技術を学ぶと同時に、ヒューマンサービスという名の下で、人々に手を差し伸べることの意義と方法を学びました。しかし、心得ておいて欲しいのは、皆さんが習得した理念や知識、さらに技術が、社会に出てすぐに役にたつわけではありません
 先日、ある卒業生から、大学で学んだことは、理想論であり、現実は、もっと厳しく、あまり役に立たないと言われたことがあります。
 大学では、確かに皆さんに保健、医療、福祉における理想の姿を教えました。それは、大学が、人類が何度となく、成功と失敗を繰り返した経験の中で、理念と知性を積み上げ、ようやく手に入れた理想の姿をみなさんに教えようとしているからです。社会に出て、現実の矛盾にぶつかることは当然です。

 しかし、もし、皆さんが理想の姿を知らなければ、現実の中の具体的な問題点を明らかにすることはできず、ただ現実を嘆くだけのことになります。私たちは、現実の厳しさを知りながら、あえて理想の姿を強調して教えました。
 ところで、マレーシアの第4代首相になったマハティール氏を御存知でしょうか? 彼は、開業医から政治家に転じ、欧米諸国ではなく、日本を見習おうと国民に呼びかけ、国力を飛躍的に増大させ、国際的にも大いなる貢献をしました。かれは、国際状況が複雑化し、不安定化が進むアジアの国々の若者を集めて、毎年、寝食を共にさせ、これからのアジアのあるべき姿を議論させます。最終日にサプライズとして、登場して若者に訴えます。「現実の世に矛盾が多いのは、青春の時描いた理想を忘れてしまった年寄りたちが作っている世界だからであり、皆さんは、今、描いた理想を決して忘れないで下さい」と訴えるのです。
 今日、私は、皆さんには、さらにお願いがあります。それは、理想を忘れないことだけではなく、理想に向かって行動を起こしてください。理想を貫こうと努力することは若者の特権であり、理想の姿を描くことは、英知を積み重ね想像ができる人間しかできない偉大な行為だからです。
 幸いなことに、どのような職場にも、理想を追っかける人はいます。夢破れて、かすんだ人生を歩んでいるように見える人物でも、消えかかっている理想を追い求めようとしています。つまり、皆さんの理解者と協力者は必ずいるということです。
 理想に突き進み、失敗するかもしれません。しかし、100%かなえられなかったとしても、1歩や2歩は前進しています。それでいいのです。本日、卒業、あるいは修了する252名、全員が1歩前に出れば、総体としては大きな進歩になります。そして、この挑戦の過程で、皆さん自身が、以前の自分と比べると間違いなく成長しています。失敗を恐れ、挑戦しなければ、人間としても、専門職として、成長することはありません。
 さらに、言わせていただければ、理想に向かって、ひたむきに生きる姿を、必ず誰かが尊敬のまなざしでみています。そして、その人は、いずれかは、あなたと一緒に仕事をしたいと思うようになります。一つの挑戦で、夢破れたとしても、再び理想に向かって生きていけるチャンスは訪れます。

 最後になりますが、皆さんと過ごした日々は、私ども教職員にとっても貴重な経験であり、一緒に学べたことは、大いなる喜びでした。皆さんが、私どもの学生であったことを、すべての教職員は、誇りに思っています。

 以上、学長としての式辞にさせていただきます。

 本日は、本当におめでとう。

保健福祉大学長  中村 丁次

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