高校生を対象にヒューマンサービスの講演会を実施しました。
山崎学長が、7月6日に県立横須賀明光高等学校、7月16日に県立二俣川看護福祉高等学校のそれぞれ1,2年生全員を対象に、「ヒューマンサービスを学ぶ」と題し、特別講演を実施しました。この講演は高校生に将来の学びや進路について広く考えてもらうことを目的に、高大連携特別事業として実施したものです。
◆学長講演から
□ヒューマンサービスとは
本学の基本理念である「ヒューマンサービス」、その根底を支えているのは二つとはない、かけがえのない「ひとの命」です。「命を敬い、命を愛し、命に仕える」、これは横須賀市内のある特別養護老人ホームに掲げられている言葉ですが、私たちの大学も、同じ目標に向けて、すべてのひとの命、人生、生活が大切にされることを目指したいと考えます。しかし、このことはそう簡単にできることではありません。ひとは大きな痛みを抱えながら生きています。中学生の三分の一が自死を考えたことがあるという調査結果もありますが、私たちは自分自身さえ見捨ててしまいかねない危機に直面することがあります。しかし、未来に向けて、このような考え方の根幹にあるものを見つめ直してみませんか。
□インビクタス「不屈」
今年サッカーのワールドカップが開催された南アフリカで、1995年にラグビーのワールドカップが開催されました。このときスポーツを通じて国が一つになったドラマを描いた映画が「インビクタス」です。南アフリカでは1950年代からアパルトヘイト(人種差別政策)が全土を覆い、反対運動により投獄されたネルソン・マンデラは27年もの間、獄中生活を余儀なくされました。マンデラは「いつか自分の国にも人の肌の色ではなく中身で判断される日が来る」との信念のもとに生き延び、1994年には大統領に就任し、アパルトヘイト体制は終焉を告げますが、国中に人種の対立と不信、格差、分断、経済不況が残されました。このとき民族の和解と協調を呼びかけたマンデラが着目したのがスポーツの持つ力です。スポーツには世界を変える力があり、特に国民に最も愛されたラグビーは、人種の壁を取り除くことにかけては政府もかなわないとマンデラは言っています。国内の対立を超えた熱狂的な支持を集めたチームは、奇跡的ともいえる勝利を重ねてワールドカップで優勝し、国はひとつになったのです。
このことについては私も大変悩んだ経験があります。1980年代、日本代表の一人としてある国際会議に出席していたときのこと、会場に入ってきた南アフリカの代表が会議への出席を拒否されたことがありました。当時、アパルトヘイトの中で大変厳しい現実の中にいた南アフリカの代表は、「自分たちは帰国したら牢獄に入れられる、それでも惨状を伝えにきた」と訴えましたが、各国は出席を許しませんでした。私はそのとき、大変悩みましたが、「排除するのではなく、話合い語り合いましょう、現実に目をそむけず一緒に考えましょう」と発言しました。私たちは分断や排除ではなく、ともに参加することを目指したいと考えます。
□ヒューマンサービスを学ぶために
ひとは一人では生きられない存在です。私たちが最も必要としているのは、一人ぼっちになってしまうことや分断されていることを乗り越えることであり、それは個人個人の結びつきによって改善されるものです。未来を創造するのは自分自身です。簡単なことではありませんが、私たちにできることはあります。意志を持って歩み、細心の注意を払って自分ができることは何かを考えてほしい。自分自身についてよく考え、よく知り、人の言葉に心を傾けて聴くコミュニケーションの力を養ってほしい。国際的な視野のもとで地球上のことに関心を持ち、社会問題や地域の問題を考えてほしい。地球上には多くの厳しい現実がありますが、私たちは「何をすべきか」ではなく、「どうあったらよいか」を一緒に考えませんか。皆さんは、今どんなふうに生きるのかという人生の岐路に立っていますが、たった一回の人生をどう過ごすか、どうあるべきかについて、細心の注意を払い、今を生きることに責任をもってほしい。南アフリカではインビクタスの精神のもと、たった一人の黒人が参加したラグビーチームの優勝が、人種や民族の対立を乗り越え国を一つにしました。私たちは逃げることなく、今を生きることに責任を持ち、壁があってもその壁を仲間と一緒に乗り越えていきたい。意思を持って動き、支え合って学び合う時間と空間とを皆さんと共有していきたいと思います。
◆国際ボランティアサークルアナーコットの活動報告
県立横須賀明光高等学校の講演会では、本学の国際交流ボランティアサークルアナーコットのメンバー3名が活動報告を行いました。
アナーコットは、「世界中の子どもたちへの支援として自分にできることを考え実行する」ことを目的に、主にカンボジアにおける健康教育を中心に活動しています。カンボジアでは急速な発展の一方でインフラ整備が遅れており、特に人材育成は最大の課題です。そこでアナーコットでは、健康に関する知識が不足している子どもたちに健康教育を行い、病気や栄養失調の予防を含め、地域の発展に寄与することを目的にスタディツアーを実施しています。昨年は看護、栄養、衛生、環境をテーマに子どもたちへの授業を実施しましたが、今年は新たに大学生同士で環境問題についての議論も行う予定とのことでした。また、一人でも多くの子供たちが音楽を楽しめるよう、国内で使われなくなった鍵盤ハーモニカを集めて現地の小学校に送る活動や、文房具の寄附についても紹介され、活動を通じ、人と出会い様々なことを学ぶことができたという報告がありました。

◆高校生のインターンシップ、ボランティアの活動報告
県立二俣川看護福祉高校の講演会では、高校生の皆さん6名から、病院でのインターンシップ体験や、社会福祉施設等でのボランティア体験について報告がありました。インターンシップ体験では、患者さんとのコミュニケーションで、「相手を知ろうとすると自然にわかりあえることがあることに気づいた」「知ろうとする心を持って接すれば思いは通じると感じた」といった体験が報告されました。また、ボランティア体験では、相手を理解することの大切さについて、「相手によっては無理に楽しませようとすることがかえってストレスになることもあるため、相手の望むことや自分ができることを知り、相手にあわせてコミュニケーションを取ることが大切だと思う」「相手を理解することでは障害者だからといって区別する必要はなく、積極的に交流し相手の気持ちを考えていきたい」との報告がされました。最後に学長から「コミュニケーションにおける心の大切さがよく理解されています。今後とも自分らしさを取り入れながら、楽しんで取り組み、さまざまな人と豊かな出会いの場を持ち、学ぶ力を高めたいものです。特に人の行為の裏にある「感情」をきちんと聴き届けることのできる感度の高いアンテナを磨き続けることで本当に素晴らしい一生の宝物の言葉に出会えるかもしれません。」というコメントがありました。